介護離職防止の法改正とは|2025年4月施行の育児・介護休業法で会社に何を申し出る?

公開: 2026年7月10日 読了目安 約5分

先に、要点だけ

  • 2025年4月1日施行の改正育児・介護休業法で、介護に直面した旨を申し出た従業員への制度の個別周知・意向確認が全企業の義務になった
  • 40歳前後のタイミングでの介護休業制度等の情報提供、研修・相談窓口などの雇用環境整備も義務化
  • 介護休暇の勤続6か月未満除外の労使協定の仕組みは廃止。介護のためのテレワーク導入は努力義務
  • 従業員側のスイッチは「介護に直面した」と会社に申し出ること。申出を理由とする不利益取扱いは禁止されている
  • 介護休業(通算93日・3回まで分割可)は自分で介護をやり切る期間ではなく、介護の体制を構築する期間として使う
この記事の目次
  1. 介護離職防止の法改正で何が変わった?(2025年4月施行)
  2. 「介護に直面した」と伝えることがスイッチになる
  3. 会社への申し出方|流れとセリフ例
  4. 介護休業93日は「体制づくり期間」として使う
  5. 日常を回すのは介護休暇・残業免除・テレワーク

親が救急搬送された日から、頭の片隅で「仕事、どうしよう」が鳴り続けている——。介護離職は、こういう日から静かに始まります。そして多くの人が、会社に言い出せないまま有休を削って消耗していきます。

結論から言うと、2025年4月1日施行の改正育児・介護休業法で、「介護に直面した」と申し出た従業員に対して、会社が両立支援制度を個別に説明し、利用の意向を確認することが義務になりました(厚生労働省)。企業規模を問わず全企業が対象です。あなたがやるべきことは制度を全部調べ上げることではなく、会社に一言申し出ること。この記事では、その伝え方と、介護休業93日の使い方を解説します。

介護離職防止の法改正で何が変わった?(2025年4月施行)

改正育児・介護休業法のうち、介護に関わる部分は次の5つです(厚生労働省リーフレットより・2025年4月1日施行)。

改正内容会社の義務
介護に直面した旨を申し出た従業員への、制度の個別周知と意向確認義務
40歳前後のタイミングでの介護休業制度等の情報提供義務
介護離職防止のための雇用環境整備(研修・相談窓口設置・事例の収集提供・方針周知のいずれか)義務
介護休暇について、勤続6か月未満を労使協定で除外できる仕組みの廃止義務
要介護状態の家族を介護する従業員がテレワークを選択できる措置努力義務

ポイントは、これまで「自分で就業規則を読み解いて申請する」ものだった介護の両立支援が、従業員の申出をきっかけに会社側が説明する仕組みに変わったことです。

「介護に直面した」と伝えることがスイッチになる

個別周知・意向確認の対象になるのは、介護に直面した旨を会社に申し出た従業員です。逆に言えば、黙っていると何も始まりません。申出を受けた会社は、次の3点を面談や書面などで個別に説明し、介護休業の取得や制度利用の意向を確認する義務を負います。

  • 介護休業や介護両立支援制度等の内容
  • 制度の申出先(人事部など)
  • 介護休業給付金のこと

💡 取得を思いとどまらせる説明はルール違反

取得や利用を控えさせるような形での個別周知・意向確認は認められないと、厚生労働省の資料に明記されています。また、介護休業などの申出・取得を理由とする不利益取扱いは法律で禁止されています。「言ったら気まずい」の心配より、法律はあなた側に立っている状況です。

会社への申し出方|流れとセリフ例

全体の流れはシンプルです。

1
会社に申し出る「親の介護に直面した(しそうだ)」と人事か上司に伝える。口頭でもメールでも可。
2
個別の説明を受ける制度内容・申出先・介護休業給付金について、面談や書面で説明される。
3
意向確認に答えるその場で決めなくてよい。「検討して改めて回答したい」で十分。
4
制度を組み合わせて使う介護休業・介護休暇・残業免除・テレワーク等で仕事を続ける体制を組む。

セリフはこの程度で十分です。「母が先週入院し、退院後は介護が必要になりそうです。育児・介護休業法の個別周知の対象になると思いますので、介護休業や両立支援制度について個別に説明をお願いできますか」。介護休業を取ると決めてから行く必要はありません。申出の時点では、状況の共有と説明の依頼だけで成立します。

介護休業93日は「体制づくり期間」として使う

介護休業は対象家族1人につき通算93日・3回まで分割して取れます。ここで一番多いつまずきが、93日の使い方の誤解です。

⚠️ 93日を「自分が介護する期間」として最初に使い切る

93日は介護が終わるまでの日数としてはまったく足りません。厚生労働省自身が、介護休業制度は介護の体制を構築するため一定期間休業する場合に対応するもの、と位置付けています。自分が介護要員になるための休みではなく、プロに任せる体制を整えるための休みと捉えると、93日の価値が変わります。

分割3回の使い方の一例です。1回目は退院前後の2〜4週間で、要介護認定の申請ケアマネジャー探し、介護サービスの契約という体制づくりに集中する。2回目は骨折や認知症の進行など状態が大きく変わった時の体制の組み直しに。3回目は施設入居の検討や看取りの局面のために残しておく。最初の90日間にやることの全体像は最初の90日ロードマップで整理しています。

日常を回すのは介護休暇・残業免除・テレワーク

休業のほかに、日常の通院付き添いやケアマネジャーとの面談に使える制度があります。介護休暇は年5日(対象家族が2人以上なら10日)で、時間単位で取得できます。2025年4月からは勤続6か月未満でも対象です。ほかに残業免除(所定外労働の制限)、時間外労働・深夜業の制限、短時間勤務等の措置があり、介護のためのテレワーク導入は会社の努力義務になりました。認定調査の立ち会いやサービス担当者会議は平日日中に入りがちなので、時間単位の介護休暇との相性が良い場面です。

もし申し出ても会社が説明してくれない、制度を使わせない雰囲気がある、という場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が相談窓口です。法律で定められた制度は、就業規則に整備が追いついていなくても申出できます。

制度の細部や社内手続きは会社ごとに異なります(2026年時点の法令に基づく解説です)。会社側の説明と並行して、介護そのものの相談先は地域包括支援センターへの電話から確保しておくと、仕事と介護の両輪が同時に回り始めます。

よくある質問

介護休業中、給料は出ますか?

会社からの給与は無給とする企業が一般的ですが、雇用保険から介護休業給付金として休業開始時賃金の67%相当が支給されます(2026年時点)。申請は勤務先経由でハローワークに行うのが基本のため、個別周知の場でも給付金の説明を受けられます。

入社したばかりでも、パートでも介護休暇は使えますか?

2025年4月の改正で、勤続6か月未満の従業員を労使協定で介護休暇の対象外にできる仕組みが廃止されました。週の所定労働日数が2日以下の場合は対象外にできる余地が残ります。有期雇用で介護休業を取る場合は、取得予定日から93日経過後6か月以内に契約満了が明らかでないことが要件です。

会社に介護のことを伝えたら、不利益になりませんか?

介護休業などの申出・取得を理由とする解雇その他の不利益取扱いは、育児・介護休業法で禁止されています。また改正法では、取得や利用を控えさせるような形での個別周知・意向確認は認められないと明示されています。困った場合は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。

介護休業は何回まで分けて取れますか?

対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割して取得できます。入院・退院直後の体制づくり、状態が変わった時、施設入居や看取りの局面など、山場に合わせて分けて使えます。

参考・出典

本記事は公的機関等の公開情報をもとに作成した一般的な情報提供であり、医学的な診断・助言に代わるものではありません。 制度の内容はお住まいの自治体や時期によって異なる場合があります。最新の情報は各公式窓口でご確認ください。