訪問介護のヘルパーが見つからないとき、家族はどう動く?人手不足時代の現実的な選択肢
先に、要点だけ
- 2025年の介護事業者の休廃業・解散は653件と過去最多で、約7割の465件が訪問介護(東京商工リサーチ)。倒産も訪問介護が91件と突出
- 訪問介護ヘルパーの有効求人倍率は14.14倍(2023年度・厚生労働省公表)。希望どおりに組めないのは家庭の落ち度ではなく全国的な構造問題
- 埋まらないときの選択肢は5つ。曜日・時間帯の調整、複数事業所の併用、デイサービスへの振替、小規模多機能型居宅介護、保険外サービス
- ケアマネジャーには「絶対に外せない条件」と「調整できる条件」を分けて伝えると、提案の幅が一気に広がる
この記事の目次
ケアマネジャーに頼んだのに「今、ヘルパーが見つからなくて」と言われて数週間待たされている。週3回お願いしたかった訪問介護が週1回しか組めない——。介護保険を申請すればサービスが受けられると思っていた家族にとって、ここは想定外のつまずきです。
先に全体像を言うと、訪問介護の人手不足は個別の運の問題ではなく全国的な構造問題で、希望どおりに埋まらないときの現実的な選択肢は「曜日・時間帯の調整」「複数事業所の併用」「デイサービスへの振替」「小規模多機能型居宅介護」「保険外サービス」の5つです。この記事では、2025〜2026年に何が起きているかを数字で押さえたうえで、はじまり期の家族がどう動けばいいかを解説します。
訪問介護のヘルパーが見つからないのはなぜ?2025〜2026年の実情
いま起きているのは、担い手の減少と事業所の撤退が同時に進む状況です。東京商工リサーチの調査では、2025年の介護事業者の休廃業・解散は653件と4年連続で過去最多を更新し、うち約7割の465件が訪問介護でした。倒産も過去最多の176件で、訪問介護が91件と突出しています。
背景にあるのが人手不足です。厚生労働省が審議会で公表したデータでは、訪問介護ヘルパーの有効求人倍率は14.14倍(2023年度)。1人の求職者を14の事業所が取り合う計算で、施設の介護職と比べても極端に高い水準が続いています。ヘルパーの高齢化も進んでおり、担い手は簡単には増えません。
つまり、あなたの家の条件が悪いから断られているのではなく、受けたくても受けられない事業所が全国で増えているということです。
はじまり期の家族にとって、この数字は何を意味するか
ニュースの数字を家族の目線に翻訳すると、次の3つになります。
- 「申請すればすぐヘルパーが来る」前提は持たない方がいい。地域や時間帯によっては、サービス開始まで待つ期間が生じます
- 希望条件をすべて満たすプランは組めないことがある。とくに朝・夕方の時間帯や土日は競争が激しく、第2案・第3案を持つ設計が現実的です
- 使えている事業所が撤退する可能性もゼロではない。1つの事業所にすべてを預けきらない発想が、結果的に家族を守ります
⚠️ 「決まらないのはケアマネの怠慢」と思い込む問題
SNS上の介護者の投稿を調査したところ、サービスが決まらない不満がケアマネジャー個人への不信に向かうケースが見られます。実際には上記のとおり構造的な供給不足で、ケアマネジャーを替えても状況が変わらないことも多いです。まず条件の広げ方を一緒に考える方が、開始までの時間は短くなります。対応の遅さ自体が続く場合の変更手順はケアマネジャーの探し方・選び方で解説しています。
サービスが埋まらないときの現実的な選択肢5つ
訪問介護(ホームヘルプ)は食事・排泄・入浴などの身体介護と、掃除・洗濯・調理などの生活援助を自宅で受けるサービスです(厚生労働省)。これが埋まらないとき、選択肢は次の5つです。
| 選択肢 | 内容 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 曜日・時間帯の調整 | 混み合う朝・夕方や土日を外し、平日日中に振り替える | 時間の融通が利く家庭。最初に試す選択肢 |
| 複数事業所の併用 | 月・水はA事業所、金はB事業所のように分担する | 週複数回の利用が必要で、1社では枠が足りない場合 |
| デイサービスへの振替 | 入浴や食事をデイサービス(通所介護)で済ませる | 本人が外出できる状態で、入浴介助が主目的の場合 |
| 小規模多機能型居宅介護 | 通い・訪問・泊まりを1事業所でまとめて提供 | 利用回数が多く、柔軟な組み替えが必要な場合 |
| 保険外サービス | 民間の家事代行・配食、自治体の生活支援など | 生活援助(掃除・調理・買い物)を補いたい場合 |
このうち家族が見落としがちなのがデイサービスへの振替です。自宅での入浴介助が組めなくても、デイサービスなら入浴設備と人員がそろっており、送迎付きで週の予定に組み込めることがあります。費用は内容や要介護度で変わるため、自己負担割合の仕組みと合わせてケアマネジャーに試算を頼んでください。
💡 「訪問介護でなければ」を一度手放す
必要なのはヘルパーという職種ではなく、入浴・食事・掃除が回ることです。目的ベースで考え直すと、デイサービス・配食・家族の分担・保険外サービスの組み合わせで意外と埋まることがあります。
ケアマネジャーへの相談の仕方:条件を2つに仕分けて渡す
供給が細っている時期は、ケアマネジャーへの伝え方で結果が変わります。ポイントは、希望をすべて並べるのではなく、譲れない条件と調整できる条件を仕分けて渡すことです。
✅ ケアマネジャーに渡すメモに書くこと
- 絶対に外せないこと(例: 入浴介助を週2回。安全に関わるため)
- 調整できること(例: 曜日・時間帯は指定なし、事業所が複数でも可)
- 家族が対応できること・できないこと(例: 土曜は家族が行ける)
- 費用の上限イメージ(月にかけられる金額の目安)
- デイサービスや保険外サービスへの振替を検討する余地があるか
そのうえで「この条件で組める形を一緒に考えてほしい。すぐ埋まらない部分の当面のしのぎ方も相談したい」と伝えれば十分です。ケアマネジャーは地域の空き状況を把握しているので、条件の幅が広いほど動きやすくなります。
一度組んだプランも固定ではありません。数か月後に事業所の空きが出て、希望の形に組み直せることもあります。月1回のモニタリング(ケアマネジャーの定期訪問)の際に「もとの希望はまだ生きている」と伝え続けてください。
事業所の空き状況や自治体独自の生活支援サービスは地域差が大きく、ここに書いた状況がそのまま当てはまらない地域もあります(2026年時点)。まずは担当のケアマネジャーか、契約前なら地域包括支援センターに現状を聞くところからで大丈夫です。介護が始まったばかりで全体の段取りをつかみたい人は、親の介護・最初の90日も参考にしてください。
よくある質問
訪問介護の依頼を事業所に断られるのはなぜですか?
ヘルパー不足で新規利用者の受け入れを止めていたり、希望の時間帯(朝・夕方など)が既に埋まっていたりするためです。事業所の経営難や人手不足は全国的な問題で、家庭側の条件が悪いから断られるわけではありません。時間帯や曜日を広げると受けてもらえる場合があります。
利用中の訪問介護事業所が閉鎖したらどうなりますか?
事業所は廃止の際に利用者の引き継ぎ先を調整することになっており、実務はケアマネジャーが中心になって代わりの事業所を探します。閉鎖の連絡を受けたら、すぐケアマネジャーに電話して引き継ぎの見通しを確認してください。空白期間ができそうな場合は、デイサービスなど他サービスでの一時的な代替も相談できます。
小規模多機能型居宅介護とはどんなサービスですか?
通い・訪問・泊まりの3つを1つの事業所がまとめて提供する地域密着型サービスです。ヘルパーの訪問だけに頼らず柔軟に組み替えられるのが強みですが、契約するとケアマネジャーもその事業所の担当に変わる、他の事業所のデイサービス等と併用できないなどの制約があります。
介護保険外のサービスはどんなものがありますか?
民間の家事代行や配食、自治体独自の生活支援(ごみ出し・買い物支援など)があります。介護保険外は全額自己負担で料金は事業者により幅があるため、まず市区町村や地域包括支援センターに、その地域で使える保険外・自治体サービスを聞くのが近道です。